現代消費者法48号に「給料ファクタリングの被害救済の実務」を執筆

現代消費者法の48号(2020年09月15日発行)に,この間,給料ファクタリングの事件を複数対応した経験等を踏まえて,「給料ファクタリングの被害救済の実務」という論稿を執筆しました。

給料ファクタリングの被害は,既に,情報商材の売買契約等を装ったいわゆる「後払い」系のヤミ金まがい取引や,給料ではなく会社に対する立替「経費」のファクタリングを謳った取引などに移りつつありますが,基本的な考え方や処理方針は変わりません。また,事業者ファクタリングの被害は未だ存在しており,東京ファクタリング弁護団でも,ファクタリング業者に既払金の返還を求めて仮差押えの申立をするなど,具体的な事件対応に当たっているところです。

近く,全国の弁護士会で,ファクタリングの電話相談等を行うことも企画されています。今後も同種被害について研究・注意喚起をしていきたいと思います。

以下,「はじめに」の部分と目次のみ,引用しておきます。

 

現代 消費者法 No.48【特集】デジタルプラットフォームと消費者の保護

 

1 はじめに

給料(給与)ファクタリングは、給与所得者等から、賃金債権(の一部)の譲渡を受けたという形式で行う資金融通サービスである。貸金業法や利息制限法の規制が及ばない「ファクタリング」を偽装した「新手のヤミ金」というべきもので、2〜3年前から被害が目立ち始め、コロナ禍による収入減も伴ってか、近時、被害相談が増加していた。筆者を含む東京三会の消費者問題を取り扱う弁護士らは、2020年3月にファクタリング被害対策弁護団(団長は釜井英法弁護士。同年4月14日に「東京ファクタリング被害対策弁護団」に改称)を結成して被害対応に当たるなどしていたが、少なくとも同年6月以降は、後述する金融庁の見解や捜査機関の対応等も相俟って、ファクタリングの業者数及び相談は激減している。もっとも、未だいくつかの業者は同様のサービスを継続しており、既払金返還請求にかかる相談等も残っていると思われることから、以下、給料ファクタリングの概要や法的性質について解説した上で、被害救済の実務の一例を紹介する。

 

2 給料ファクタリングとは

⑴ ファクタリングとは

⑵ 給料ファクタリングサービス

⑶ その他の給料前払いサービスとの違い

 

3 給与ファクタリングの法的性質、契約の効力

⑴ 「貸付け」、「貸金業」該当性

⑵ 契約の効力

 

4 顧客からの不当利得返還請求・損害賠償請求

⑴ ファクタリング業者に対する不当利得返還請求(差額説と全額説)

⑵ 不法行為ないし会社法に基づく損害賠償請求

 

5 給料ファクタリングの被害救済について

⑴ 事情聴取

⑵ 受任通知(受任の連絡)・交渉

⑶ 仮差押え・口座凍結

⑷ 訴訟・刑事告訴等

 

6 終わりに