長期間の管理費滞納に対する対応(無剰余取消を避けるための59条競売)
- 2015.03.31
- 2 業務ー不動産取引 関連
先般,私が担当した,10年以上にわたってマンションの管理費を滞納されたという案件が解決した。
結論から言うと,滞納金全額に遅延損害金を付加した金額を回収することができ,依頼者であった管理組合の方々にも非常に喜んで頂くことができた。
管理費滞納に対する対応はいくつかあり,事案毎に対応していかなければならない。今回は,上記のとおり特に悪質な(滞納期間の長い)事案であり,管理組合の方々も,以前に滞納金の支払いを求めて弁護士に依頼して裁判を提起し,判決を得ていたが,解決していないということだった(差押え等が奏功せず,その後も居住と滞納が続いていた。)。
管理費の滞納について判決を得ていれば,その判決に基づいて競売を申し立てることも可能ではある。しかし,当該マンションに抵当権や税金の差押え登記等がなされている場合,通常の判決(債務名義)に基づく強制競売では,民事執行法63条によって競売が取り消されてしまうため(いわゆる「無剰余取消」),意味がない。
そこで,今回は,最も「強い」対応である,区分所有法59条1項に基づく競売許可の申立→競売申立という方法を取った。
区分所有法は,「区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法59条1項,57条1項,6条1項)に該当し,これにより「区分所有者の共同生活上の障害が著しく,他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」(同法59条1項)な状態が生じている場合は,「訴えをもって,当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。」と定めている。 管理費の滞納が長期間に亘る場合,上記の「区分所有者の共同の利益に反する」といえる。そして,競売で競落された場合は,滞納管理費等は競落人が引き継ぐことになるのが原則であるから,競落人から滞納管理費等の支払いを受けることができる。
今回は,上記手続によって冒頭で述べたような解決となった。
管理費の滞納問題は,金銭的な問題だけでなく,近隣関係に及ぶ事案もあり,ベストの対応を選ぶことが最も必要である。そのためには,管理組合は管理会社に委せるのではなく,弁護士等の専門家に相談して,自主的に動くことも必要だと思う。
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