商品先物取引に関する不招請勧誘規制撤廃に反対する意見(パブコメに対する意見)

私が事務局長を務める東京投資被害弁護士研究会で,平成26年4月17日,「商品先物取引法施行規則」及び 「商品先物取引業者の監督の基本的な指針」改正案に対する意見書(パブリックコメントに対する意見書)を提出致しました。
商品先物取引の不招請勧誘は,要するに勧誘を望んでいない顧客に対して,突然,全財産を失う可能性があるリスクを持ち込むということです。このような勧誘を野放しにしてはまた従前のような商品先物取引被害を続発させることになりかねませんし,さらにこのような勧誘に頼っていては,健全な市場の発展にも繋がらないと思います。
したがってこのような改正案は,反対です。 概要は以下のとおりです。

 (http://www.tokyosakimonosyokenhigai.com/syomen/ikensyo.html

1 農水省及び経産省がパブリックコメントに付している本改正案のうち,規則第102条の2第1号は,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘を不招請勧誘禁止の適用除外とするものであり,現行規則第102条の2では,当該商品先物取引業者との「継続的取引関係にある顧客」とされているものを,「既契約者」として,自社以外の顧客に対する不招請勧誘を禁止の適用除外に含めようとするものです。
しかし,自社以外の顧客に対する,商品先物取引の勧誘を目的とする電話又は訪問による勧誘を誘発したり,客観的資料等による確認がなされないまま,自社以外の商品先物取引業者との間でハイリスク取引の経験があると申告させて,自社との商品先物取引契約を締結させるおそれのあるものであって,このような安易な改正案には反対です。
2 規則第102条の2第2号は,70歳未満の個人顧客について,熟慮期間等を設定した契約の勧誘(規則第102条の2第2号)を加えるものですが,下記に述べるとおり,熟慮期間等の設定を考慮しても,70歳未満の個人顧客に対しては,電話又は訪問による勧誘を事実上解禁し,規則によって,不招請勧誘禁止を定めた法律の規定を骨抜きにするものであり,委託者保護の点から許されないと考えます。このような規則の改正は,法律の委任の範囲を超えていると言わざるを得ないもので,強く反対です。
なお,規則第102条の2第2号は,70歳以上の場合は契約できないとしていますが(そもそも何故70歳とするのか不明である),商品先物取引業者が70歳以上の顧客に対して,勧誘目的で電話又は訪問すること自体を禁止する文言ではなく,商品先物取引業者が,顧客に勧誘目的で無差別に電話又は訪問を行って顧客との接点をもった後当該顧客が70歳以上であった場合には,後日,当該顧客から商品先物取引を行いたいとの申出があったとして,商品先物取引を開始させるといった潜脱行為が行われることは容易に予想されるところです。
3 そもそも透明かつ公正な市場を育成し,委託者保護を図るべき監督官庁の立場と相容れないものである上,「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為として主務省令で定める行為を除く」(商品先物取引法第214条第9号括弧書き)とする法律の委任の範囲を超え,施行規則によって法律の規定を骨抜きにするものと言わざるを得ません。
商品先物取引市場を活性化したいのであれば,商品先物取引の勧誘を望んでおらず,同取引と無縁の生活をしている一般消費者(素人。特に高齢者)に突然,甚大な経済的損失を生じさせる危険を持ち込むような「不招請勧誘」などに頼るべきではなく,市場の公正・適正化や信頼回復に努めるべきです。
当研究会としては,この不招請勧誘禁止改正案については,強く反対します。