郷田真隆棋王 と 村山聖九段 (弁護士会 将棋会)

7月21日に,将棋会館で弁護士会の将棋会が開催された。今回は,片上・北尾ご夫婦の他,ななんと現タイトルホルダーである,郷田真隆棋王にお出で頂いた。
郷田棋王については,皆さん当然知っているというか,知っていなければならないと思うのだが,よく弁護士会の飲み会などで将棋の話をすると,「また島さんの将棋話が始まった・・」とか「もう将棋の話はええから」などと言われて制止され,十分ご理解頂けないことがあるので,念のため,説明しておく。
郷田棋王は19歳でプロになり,四段の時,21歳であっという間にタイトルを取った。いわゆる羽生世代の中心的な一人で,最近でも2011年に棋王のタイトルを取り,現タイトルホルダー。剛直な気風で妥協しない。要するに,「すごい」方である。
このような「すごい」方が将棋会館で指導をしてくれる。野球を知っている方は,例えば,松井選手が東京ドームでキャッチボールをして下さると考えて頂いて間違いない。私も二枚落ちで一局指して頂いた。最後は時間切れで投了して頂いたが,続けていたら負けていたと思う。

もっとも,一番心に残ったのは,その後の懇親会の席での話であった。私は運良く(?)郷田棋王の隣の席に陣取ることができ,そのおかげで約2時間,お話させて頂いた。その際,郷田棋王から「いつから将棋をやられるようになったんですか?」と話を振って頂いたので,私は「弁護士になってからなので数年前からです。『聖の青春』という小説を読みまして・・」と答えた。「聖の青春」とは,若くして亡くなった天才棋士である故村山聖九段の生涯を綴った本である。
すると,私の前に座っていた初めて来た女性弁護士(そもそも将棋会に女性が来るのも初である)も,「私もその小説は読みました。」と続けた。
それを聞いた郷田棋王が嬉しそうに,「いや,それは嬉しいですね。(上の方を指して)彼もこの辺で,喜んでいるんじゃないかな。」と笑って故村山聖九段の話をして下さった。
「彼は本当にいい男でした。」,「彼は本音で話す男で,相手が人に合わせたような事や,本心では思っていないような事を言うと,ちょっと不満そうになる瞬間が何度かありました。」,「彼は自分の体の事が分かっていたから。」,「だからと言って非常識な対応とかはしませんでしたよ。」という趣旨のことをお話してくれた。
故村山聖九段を殆ど将棋を知らない女性弁護士が知っているのを聞いて,嬉しそうにしている郷田棋王を見ると,ああお二人は本当に仲がよかったのだな,とこちらも嬉しくなった。
故村山聖九段の事を説明すると長くなるので,「聖の青春」を読んで頂きたい。
名著である。
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