投資信託・投資法人法制の見直しに関する意見書

標題の「投資信託・投資法人の見直しに関する意見書」が,日弁連から平成24年6月15日付けで公表され,本日,金融庁に執行された。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120615.html
この意見書は,日弁連消費者委員会の金融サービス部会で作成したもので,私もその起案メンバーの一人として関与させて頂いた。
一般の方が理解するのは困難な内容となっているが,できる限りかみ砕いて,説明を加えておきたい。
前提として,近時,投資信託に関する被害相談等が増加しているという背景がある。
その大きな理由としては,投資信託のうち,特殊な条件が定められた債券(デリバティブを活用した仕組債)を投資対象とする複雑な仕組みの投資信託(いわゆるノックイン型投資信託等)に関する相談が増加していることを挙げることができる。     例えば日経平均リンク型投資信託等の場合,株価観測期間中に定められた「ノックイン価格」を,日経平均株価が一度も下回らなければ(1度もタッチしなければ),投資家は一定の利回りを得られるが,1度でも下回ると元本が原則として毀損され,償還額が日経平均株価に連動することになるなどというリスクの高いものとなっている。
このような投資信託は,従来一般的であった,運用成績に対応した利回りが得られる投資信託とは根本的に異なり,プロである運用会社に資金の運用を委せるという一般投資家がイメージする投資信託の本質とも乖離した仕組みになっている。
したがって,このようなデリバティブを活用した仕組債等を投資対象とする投資信託については,そもそも一般投資家に「投資信託」として販売すべき商品でないとも考えられるが,仮に販売自体を禁止することが困難だとしても,一般投資家が被る可能性のあるリスク量を一定の範囲で制限するなど,従来の販売規制だけでなく,そこから一歩踏み込んだ新たな商品規制を導入すべきでだ,というのが今回の意見書の趣旨である。
販売規制だけでは足りないと考える理由の詳細については意見書を参照して頂きたいが,私としては,要するに特に複雑な投資信託においては,その組成・運用の過程等が,投資家からすると完全な「ブラックボックス」であり,これを説明や開示のみによって規制するのは限界がある,ということに尽きると思っている。
 
投資信託・投資法人の見直しについては,今,正に,金融審議会の「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」で,議論がなされている最中である。議事録や資料も,ホームページで見ることができる。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/toushi/gijiroku/20120307.html
一般投資家の側を向いた法制の見直しでなければ,一般投資家からの信頼を得ることはできない。ワーキンググループでの議論が,正しい方向で決着するよう,その行方を注視し,更に意見を述べていきたい。