空飛ぶ円盤?の報告

1 8月の大雪山旭岳山頂直下での右足指骨折以来、一時車椅子や松葉杖やらにお世話になる(格好悪いのですぐ止めた)などと、いろいろあったが、未だ若干ビッコをひいている(数年前中央アルプスで右膝を痛めて以来同じ右足なので多少不便をしている)。医者は年内いっぱい位は覚悟せよとのことだが、やなこった(それでも歳を考えろ、とのことらしい)。ただ、身体障害者の不便や苦労は実感した。

事故のことはあまり思い出したくないが、やはり当夜の出来事でメモしておきたいことがひとつある。

 

2 山岳救助に限らず、夜間の救助活動は二重遭難の危険があるので、翌朝早くの救助隊の出発を予測して、当夜は現場で一夜を明かす覚悟だった。幸い万一の為の水、食料、雨具等は充分用意してあった。もっとも一番肝心の夏用羽毛服については、たまたま昼に出会った同じ単独行の登山者の人が寒いというので、これを貸してしまっていた(ただ私の場合、冬でも畳と竹のスノコの上に敷布を敷き、嫌いな暖房なしの部屋で寝ている位なので、寒さには強いようだ。それでもいざとなったら、下着を総動員したり、新聞紙を服の下に巻きつけてその上に雨具でも身につければ一応なんとかなるので、さしたる不安もなかった。ただ、旭岳山頂は真夏でも時には零度近くまで下がることもあるとは聞いていた)。

 

3 ところが、夜10時頃、予め一報を入れていた警察から連絡があって、これから出発するとのこと。驚く一方、やはり有難かった。ルートは、夜間、岩だらけの悪路なので、到着は4〜5時間先と予想した(実際に着いたのは早くも午前2時頃)。

書いておきたいのは、この間に、私が目にした出来事である。

当夜は、少々風があり、ガスや雲の切れ間に時折のぞくのは半月だけだった。ところが間もなく(?)、大きな半月の左脇辺り(?)から、月位の大きさの丸い飛行物体が「断続的に」右から左へと一直線に移動してゆき、数秒のうちにガスの中に紛れて見えなくなってしまった。

最初は幻視かなと思って、頬を叩いたり、頭をゆすったりしてみたが、視界や対象物の動きに変化はなかった。

 

4 その後東京に戻ってから家族や知人に「空飛ぶ円盤かな」と話してみたが、誰も相手にしてくれなかった。

元々朝方まで待つ覚悟を決めていたので、それなりに頭はクリアーだったし、夜中には救助隊の到着も期待できそうだし、さすがにまだ眠くもなかったから、その準備もしていない。

あれは一体何なんだ、と考えれば考える程、眠気なぞはじめから吹き飛んでいた。

 

5 私自身は太陽系を含む宇宙内に限っても、人類と同等ないしそれ以上の知的能力を有する生物(宇宙人)が存在すると思っているが、その宇宙人が地球にまでやってくることはないだろうと考えていた。光の速度がこの宇宙における最速の移動速度とすれば、移動時間と生物(宇宙人)寿命との関係で(移動中「冬眠」するにしても)宇宙人が地球までやってくるのは不可能と考えていた。

しかし、宇宙空間が等質であるとの前提が真理とは限らない。

こう考えてみると、宇宙人が地球に現れても何ら不思議ではない。

旭岳山頂で見た断続的な移動光源は、人間以外の生物による操作物体ないし現象の可能性もなきにしもあらずと思ったのである。

 

6 旭岳の一夜の経験は、本当は非常に稀有な経験でなかったのではないのか。年とともに想像力も一層もっともらしくかつ自由になり、それなりに楽しいものである。それとも足指骨折の痛さが引き起こした幻視と幻想だったのか。

最後に、交替で背負ってくれた道警の山岳救助隊の皆さんに心からの感謝したことは忘れない。そして最初に飲ませてくれたうす甘く熱いスポーツドリンク(?)は、かつて味わったどんな飲み物よりもうまかった。

 

7 今後山に行く時は、夏でもストーブを持参しよう。

年始は山頂で初日の出を見たい。それまでには右足をまともに使えるようにしておきたい。

うずくまる 大雪旭 霧流れ 深夜の半月 吾をとがむか