仕組債の事案で勝訴判決 (東京地判平成28年6月17日)

 平成28年6月17日に,みずほ証券に対する損害賠償請求を認容する判決を獲得しましたので,報告します。

第1 事案の概要

 本件は,取引開始当時77歳(最初の仕組み債購入時)ないし78歳(最後の仕組み債購入時)であり,認知症等を理由に要支援の認定を受けていて,自宅で,1人で生活していた女性が,みずほ銀行の担当者からみずほ証券を紹介され,みずほ証券の担当者に,仕組みが複雑な「仕組み債」を,計4つ,合計で7146万4000円分支払ったところ,リーマンショックによる株価の暴落で,約4000万円の損害を被ったという事案でした。

原告が購入した仕組み債は,海外の会社が発行する,エクイティリンク債及びEB債というもので,購入後3か月は12.3〜25%という高利が得られるが,対象となっている株式(日本企業の株式)の株価に連動し,その株価が1つでも「ノックイン価格」を下回るなどした場合には,元金が大幅に毀損される危険性を有するものでした。

第2 本件訴訟の概要

提訴日は平成25年7月31日であり,請求額は4340万6592円(弁護士費用を含む),被告はみずほ証券(株)(当時,みずほインベスターズ証券)及び(株)みずほ銀行でした。

原告は都内在住の女性(取引開始当時,77〜78歳)で,取引開始前から,認知症で要支援1(当時。現在,要介護1)の診断を受けており,出資に充てたお金は,亡夫からの相続金でした。

主な争点は,①勧誘行為の違法性(適合性原則違反,説明義務違反),②みずほ銀行の責任,③損害,④過失相殺でした。

第3 判決の概要

1 主文

判決は,以下のように述べて,みずほ証券に対し,3038万6615円及びこれに対する平成23年10月14日から支払い済みまで,年5分の割合による遅延損害金の支払いを命じました。他方で,みずほ銀行に対する請求は棄却しました。

2 理由

①   適合性原則違反

「本件各商品の含むリスクが相当程度大きく,原告は本件各取引によってその抱えるリスクを過大に負担することになったものであり,かつ,そのリスクの大きさ及び仕組みの難解さに鑑みれば本件各商品の購入による損得を適切に判断するためには相当程度高度の投資判断能力が要求されるものであったと認められるのに対し,原告の年齢や認知症の程度に加え,その投資意向,財産状態及び投資経験等の諸要素を総合的に判断すると,●●(みずほ証券担当者)が原告に対して本件各商品の購入を勧誘したことは,適合性の原則から著しく逸脱したものであるというほかなく,これによって本件取引を行わせたことは,不法行為法上も違法と評価することができる」として,肯定しました。

②   説明義務違反

「原告の属性等は,前記1認定事実(1)及び前記4(3)において検討したとおりであって,原告の投資取引に関する知識,経験,財産状況等に照らすと,前記(2)の説明内容によって,原告において本件各商品の取引に伴う危険性を具体的に理解できるような情報が,必要な時間をかけて十分に提供されたとは認め難い」として,肯定しました。

③   みずほ銀行の責任

みずほ銀行の担当者が勧誘したとは認められないとして,否定しました。

④   過失相殺

一定程度の金額については,元本割れのリスクを含む投資を行う財産的な余裕を有していたなどとして,3割を過失相殺しました。

 

第4 総括

1 この事件が問題となった平成20年ころは,都市銀行・地方銀行により,複雑な仕組み債などの勧誘が活発に行われ,多数の高齢者に多額の被害を被らせていました。本件もそのような事案の1つであり,顧客の資産を把握し,顧客の信頼を置かれやすいみずほ銀行の担当者(証券会社出身)が,みずほ銀行の支店内で,みずほ証券の担当者を紹介し,仕組み債の仕組みや危険性を理解し得ない高齢者に,7000万円を超える仕組み債を購入させたという事案でした。

2 同種の事案は多数あったと思われますが,商品の難解性等を理由に適合性原則違反を認めて証券会社の責任を認めた判決は,本事案の結論としては当然といえますが,重要であることは間違いなく,同種事案の参考になると思います。

以上

(追記)

いくつかの報道機関でも報道されたようです。以下,朝日新聞の記事を引用致します。

 

(朝日新聞 平成28年6月17日より引用)

「仕組み債」と呼ばれるリスクの高い金融商品への投資を勧められて多額の損失を出したとして、東京都練馬区の80代女性が、販売したみずほ証券東京都千代田区)などに約4340万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は17日、約3040万円の支払いを同社に命じた。青木晋裁判長は「高齢で認知症もあった女性に、高度の投資能力が要求される商品の勧誘をしたのは違法」と認定した。

判決によると、女性は77~78歳だった2008年、みずほ銀行の紹介で、みずほ証券の前身の証券会社から四つの仕組み債を購入。計約7150万円を支払ったが、リーマン・ショック後に約4千万円の損失を出した。女性は複雑な商品への投資経験がなく、購入時に認知症を発症していた。

みずほ証券は「主張が認められず残念。今後については判決を詳細に検討した上で決定する」としている。