「世論」ということ

1 私は川崎市の宿河原という多摩川のほとりにある高校の出身なのだが、ついこの間まで、近所の旧跡(?)として、高校のある場所を多摩川沿いに更に遡った上流にある分倍河原という所に興味をもっていた。その河原で、北面の武士であった鴨長明が決闘をした、と思い込んでいたのである。

しかしどうも違うらしい。まだ原典は当っていないが、場所は正しく高校のあった宿河原という所であり、出典は徒然草であって、関係者は同様北面の武士であったといわれる兼好法師。ただし、兼好は決闘の当事者ではなく、見物人の一人だった、ということのようである。

これでも、古文、漢文の類いは好きだったのだが、お粗末な記憶である。

 

2 昨日、同種訴訟の係属する各地の地裁の先陣を切って、前橋地裁で、国と東電について、原発事故と地震及び15m余の大津波の予見可能性ありとして、事故の結果やむなく避難するに至った元福島住民に対する損害賠償義務を認めた判決が出た。

 

3 ところで「原発が安全」という神話は、単なる住民のお粗末な記憶違いや思い込みではない。政府や電力会社の意図的な世論操作の結果である。

何が安全なものか、何が経済的なものか、何が環境への負荷が小さい?一部の識者は早くからそのことを指摘していた。私も半世紀近く前にそうした小さな勉強会に参加した。ちなみに、アスベストの害(肺ガンなどの発症の危険)なども、私の記憶では半世紀近く前から指摘されていたし、その勉強会もあった。そうした少数意見はずっと封殺されてきた。

 

4 世論操作というのは、金があれば一定のところまではできる。

例えば、最近のことでいえば、遺伝子組換え(GM)作物とその表示の問題がある。日本に流通するトウモロコシ、大豆などの80〜90%はアメリカ産でその大半はGM作物であって、その加工品であるコーン油、大豆油、ナタネ油、あるいはポップコーンやスナック菓子、そして豆腐、納豆、味噌、きなこなどの日本の伝統食品に至るまでGM作物由来となっている。

 

5 アメリカ穀物協会の幹部は、自国の主食だから小麦をGM小麦にはしないが、トウモロコシや大豆は家畜のエサだからかまわないとうそぶいたそうだ(その実未承認のGM小麦も事実上アメリカの各地に試作研究の過程で流失、交配、繁殖し出しているらしいが)。人間の場合、開発後歴史の浅いGM作物を50年、60年と食べ続けた事例はない。しかし、フランスでは、2012年、GM飼料を与え続けたマウスのガン発生率が異常に高くなったとの研究結果が発表されて物議を醸した。

それでかどうかは知らないが、2012年カリフォルニア州でGM作物の表示義務化の運動が起きた。初期の世論調査では賛成が圧倒的に優勢(単に表示しろというだけなのだから当然だろう)との報道だったが、住民投票の結果は逆転し、表示義務化の法案は否決された。表示反対派のロビー活動費や宣伝広告費は、賛成派とは桁違いだったようである。オバマ政権下のことである。

 

6 アメリカとのTPP交渉の結果、日本でのGM作物の表示義務(実態は非常に不完全ではあるが)も、アメリカ並みになろう。

トランプ政権はTPPの承認は拒否したが、それはもっとアメリカに都合のよい農業政策に日本も組込まれるということである(その最も悪しき前例は、当時の野田政権下において、日本の狂牛病輸入制限について何の科学的根拠もなく、これを骨抜きにされたことである)。

事は食の安全にかかわる問題である。日本政府はこの問題を国家の安全保障として捉えていないのであろうか。単なる経済的な輸出入問題ではない。今日本の食料自給率は恐らく30%台がいいところではないかと思っている。そこに今や質的に危険な食品が日本中の食卓に氾濫しようとしている。日本の食品は質量ともにアメリカの属国化しつつあるのである。もしかすると、戦後間もなく、アメリカからの学校給食への脱脂粉乳の供与によって子供達がかろうじて栄養を補給した時代からの摺り込みの効果なのだろうか。

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