年末年始の業務について 

今年も色々なことがありましたが,終わってみれば,あっという間に1年が過ぎてしまったという印象です。来年は,個々の案件を迅速かつ適切に処理することは勿論ですが,個々の案件から離れたインプット・アウトプットの重要性をより意識して,取り組んでいきたいと思います。
弊事務所の年末年始の予定は以下のとおりです。

2012年の業務 12月28日まで
2013年の業務 1月7日から

本年も大変お世話になりました。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

(弁護士 島 幸明)

証券取引等監視委員会講演 〜公正な証券市場の確立に向けて〜

3月2日,私が部会長を務める第二東京弁護士会の消費者委員会金融サービス部会の企画で,証券取引等監視委員会(SESC)の方々に,「公正な証券市場の確立に向けて」と題して,講演をして頂きました。
証券取引等監視委員会は,オリンパスやAIJ投資顧問など,ますます取り扱わなければならない事件が増えているようで,この時期に実務も担当しておられる方々のお話を聞けたのは,非常に有益でした。

なお講演に来て頂いた松井事務局次長は,つい最近まで,東京地裁の部総括判事をされていた方で(裁判所から出向されているということでした),私も裁判所で何度もお見かけしたことがあっただけに,控え室で名刺をお渡しする際は,「もうお会いさせて頂いていますが・・(笑)」と言いながらお渡ししました。

講演の内容はホームページにアップされていますので,よろしければ是非ご覧下さい。

http://www.fsa.go.jp/sesc/kouen/kouen.htm#0302

犯罪収益移転防止法の解説

比較的新しい法律として,「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯罪収益移転防止法がある。

あまり知られている法律ではないが,最近この法律について研究する機会があったので,以下,その概要について解説しておきたい。

1 この犯罪収益移転防止法は,平成19年3月に制定され,平成20年3月1日に施行された。
同法の施行により,今まで金融機関等に本人確認の義務を課していた金融機関本人確認法や、疑わしい取引の届出の根拠となっていた組織犯罪処罰法第5章は廃止される。

2 犯罪収益移転防止法の目的は,その名称のとおり,組織的犯罪による収益の「移転」防止にある。
すなわち,違法収益が組織的な犯罪を助長するために使用されるとともに,これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えるものであること,及び犯罪による収益の移転が没収、追徴その他の手続によりこれをはく奪し,又は犯罪による被害の回復に充てることを困難にするものであることから,犯罪による収益の移転を防止すること(以下「犯罪による収益の移転防止」という。)が極めて重要であることにかんがみ,組織的犯罪により得た収益をはく奪したり被害の回復を図ったりするために犯罪による収益の移転防止を図るとともに,テロ行為などへの資金の供与防止を確保するなどにより,国民生活の安全と平穏を確保し、経済活動の健全な発展に寄与する,というところにある。

3 この法律は,特定事業者に,主に①本人確認義務(第4条),②本人確認記録の作成・保存義務(第6条),③取引記録の作成・保存義務(第7条),④疑わしい取引の届出義務(第9条)等を課している。本人確認記録,取引記録の保存期間は7年である。
ここでいう特定事業者とは,金融機関,ファイナンスリース業者,クレジットカード業者,宅地建物取引業者,貴金属等取引業者,郵便物受取・電話受付等サービス業者のほか,弁護士等も含まれる(もっとも,弁護士等については本人確認措置等についての特則がある。)。

4 本人確認の対象は,例えば法人取引の場合は登記事項証明書等の公的証明書により法人の本人確認を行うとともに,現に取引の任にあたっている取引担当者個人の本人確認の双方が必要とされる。また,確認の方法は,非対面取引の際には本人確認書類に記載された住所に対して本人限定受取郵便等により送付することが必要であるなどとしている。

5 同法により特定事業者に対する立入検査や是正命令等の行政処分(第13条から第16条)をすることが可能となるほか,特定事業者が本人特定事項を隠ぺいする目的で本人確認義務を履行しなかった場合は,一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金を科されることが規定されている(第25条)。

6 私が(扱う業務の関連で)重要であると思うのは,近時違法取引等でも利用されるバーチャルオフィス等が,同法に基づいて本人確認義務等を負うことが明確化されたという点である。
上記に係る特定事業者の正確な定義付けは,「顧客に対し,自己の居所若しくは事務所の所在地を当該顧客が郵便物を受け取る場所として用い,又は自己の電話番号を当該顧客が連絡先の電話番号として用いることを許諾し,当該自己の居所若しくは事務所において当該顧客あての郵便物を受け取ってこれを当該顧客に引き渡し,又は当該顧客あての当該電話番号に係る電話(ファクシミリ装置による通信を含む。第二十条第一項第十一号において同じ。)を受けてその内容を当該顧客に連絡する役務を提供する業務を行う者」である(38号)。
したがって,バーチャルオフィスは,いわゆる郵便受取サービスを伴うケースがほとんどであるから,これも同法にいう特定事業者に該当する。
当該法律は,1項記載のとおり組織的犯罪による収益の「移転」防止を本来的な目的とするものであるが,実際に違法行為が行われた際に,違法行為の実行者及び関与者を探知するためにも利用されることが予定されているというべきで,それがひいては組織的犯罪による収益「移転」防止にも繋がる。この点,バーチャルオフィス等の業者の中には,いわゆる弁護士法照会等による照会請求に応じない業者もないわけでない。しかし,同法が本人確認を義務付けてその確認書類,取引書類の作成・保存義務を課していることの意味を考えれば,法定の手続を利用した開示請求等がなされた場合はこれに応じるべきことは当然であろう。

H24.3.2追記

なお固定電話を悪質業者にレンタル,利用させる業務は種々あるが,上記法律ではカバーできないサービスもあるようだ(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/money/pdf/kaisetsu.pdf)。

適正な法改正,運用が望まれる。

無登録ファンド JAM 社長逮捕へ

以前に紹介した,JAM株式会社(JAM)の代表取締役である網中徳次容疑者ら四名が,本日,詐欺容疑で逮捕されました。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009061702000238.html

同 時に,JAMの経理担当マネジャーと,株式会社BENE(BENE)の元社長,同社経理担当者も逮捕されているという報道がなされていますが,これは BENE及びJAMが,ベトナムの未公開株を購入するとして金員を集めた行為を,被疑事実としているからであると思われます。
しかし,報道でもあるとおり,JAMがお金を集めた手口はこればかりではなく,むしろ多くは,日経225,FX自動売買システム,リゾート開発等による運用を名目とするものです。今後の捜査で,これら全てに関する運用の実態等が明らかになることが望まれます。

な お,私が担当していた裁判は,既にJAM,BENEらが全額の支払義務を認める形で解決していましたが(一部支払済),今月,更に他の複数の被害者の方を 原告にして,JAMらに対する訴訟を提起しました。ところが,裁判におけるJAMの連絡先が,「フロンティア倶楽部」という新たな名前に変わったという届 出がJAMからなされていました。
JAMの会員だけでなく,その他の方々も,「フロンティア倶楽部」には注意が必要です。

(弁護士 島幸明)

無登録ファンド JAMによる被害・・・ついに強制捜索へ

金融商品取引法上の登録を受けていないにもかかわらず,マルチ契約方式,匿名組合方式を利用して,広く一般消費者から金員を集めていたJAM株式会社(代 表者網中徳次)に対し,千葉県警生活経済課は18日,ついに関係先計16カ所を金融商品取引法違反容疑で強制捜索しました。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20090218-OYT8T01064.htm(読売新聞)

JAM の代表者である網中徳次は,従前は,「株式会社ソーコー21」,「株式会社パティオ東京ベイ」という会社で同様の行為を行っており,その営業をJAMが引 き継いだ形になっていました。JAMは,当初「日経225株価指数取引及び上場株式の売買」で運用を行うとしていましたが,平成19年12月ころより,配 当が滞りだし,以後は外国為替証拠金取引の自動売買システム,リゾート開発など,手を変え品を変えて更なる支払を求めるなどしていました。
これまでの千葉県警の調べでは,JAMは出資者約1万1000人から350億円ほどを集めていたことが確認されているが,出資者,出資額ともにさらに増えるとみられるとのことです。

私も現在,複数の被害者の方の依頼を受けて,支払金の返還を求める民事訴訟を追行していますが,今回の警察による強制捜索により,JAMの実態が解明されることを期待します。

(弁護士 島幸明)

判決事例報告(商店街振興組合法に関する裁判例)

皆さんの街にある商店街の多くは、商店街振興組合法に基づく組合を結成しています。商店街振興組合法とは、商店街で事業を営む者等が協同して経済事業を行なうとともに、当該地域の環境の整備改善を図るための事業を行なうのに必要な組織等について定めた法律です。

商店街振興組合法が定めている商店街振興組合は任意団体であり、加入・不加入の自由が認められ、また組合に加入したか否かについては、出資の払込を必要とされる出資組合です。
本判決は、組合費を払っていたことがあったとしても、出資の払込をしていない者は、法律上組合員とは認められないと判示し、また組合費を支払う旨の黙示の合意の成立も否定したものです。

(判決文はこちら)
第1審http://nishiginzalaw.com/toukyouchisai190726.pdf
第2審http://nishiginzalaw.com/tokyokousai191115.pdf

理論上当然の判断ではありますが、商店街振興組合において、出資の払込を求める手続がなおざりにされていることに警鐘を鳴らすものとして、参考になります。また、商店街振興組合法に関する裁判例は殆ど刊行物に掲載されていないことから、紹介することにしました。

な お、平成19年4月1日から中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律(平成18年6月15日、平成18年法律第75号)が施行され、これにより改正商 店街振興組合法も施行され運営方法が変わります。会社法施行に伴う改正ですが、小さな改正ではないので、注意が必要です。商店街振興組合法については、別 に相談を受けることもありますので、追って内容等を紹介できればと思います。

(弁護士 島 幸明)

中古車 メーター(走行距離計) 改ざん事件の判決

中古車を購入した依頼者が、走行距離計の交換がされている事実について説明を受けていなかったことを理由に主位的に詐欺、予備的に消費者契約法取消を求めて、中古車販売業者に代金返金等を求めた裁判で、消費者契約法取消を認めて代金返金を認めた判決を得ました。
(判決文はこちら)
http://nishiginzalaw.com/toukyoukansai20117.pdf

本件では、走行距離計の交換の事実を説明していたか否かが主要な争点となりました。当方は、走行距離を積極的に偽って告知したものとして、詐欺による不法行 為損害賠償請求をしたのですが、判決では、積極的に偽ったとまでは言えないけれども、走行距離が不明であることにつき説明をしていなかったと認定され、自 動車の代金額についてのみ支払を命じました。

中古車の走行距離改ざんは、比較的よく耳にする話ではありますが、判決に至ったケースは多く はないようです。中古車の走行距離は、中古車取引において極めて重要な要素ですから、その点についての説明不足や事実に反する説明があった場合には、取消 が認められてしかるべきであろうと思います。

(弁護士 西牧佑介)

 

判決事例報告(商品先物取引:対ローズコモディティ)

商品先物取引(対ローズコモディティ)の事案で、以下の勝訴判決を得ました。

http://www.hyogoben.or.jp/hanrei/hanreihtml/071029-t.html

商品先物取引とは、小豆等の商品を、ある一定の日を受渡しの日と定めて、今の時点でその価格を取り決め、その日になったら代金と品物とを受渡しする取引のことです。

商品先物取引は、リスクが極めて高く、その構造も複雑な上、(ネット取引でないと)手数料も高いことから、これまで多くの被害を生んできました。
そこで弁護士も、これらの被害について古くから研鑽を重ね、多くの裁判例が積み上げられてきました。私(島幸明)が現在事務局を務める商品先物取引被害研究会(http://futures.ferio.net/fc/)でも、毎年2回の研究会が実施され、全国の弁護士が活発な議論を行っております。

本事案はその中の一つの事例ですが、過去にFX(外国為替証拠金取引)の取引がありながら適合性原則違反を認めた点、過失相殺を2割とした点などに特徴があります。皆様の参考になれば幸いです。

(弁護士 島幸明)